『このマンガを読め!』は、2004年末から出しているので、

これで5冊目、5年目、である。


当初、この『このマンガを読め!』を作るにあたって、
「マンガのコマを引用」しすべきかどうか、かなり迷った。


このようなマンガガイドではコマの引用は不可欠だと思いはしたが、
かつて、マンガのコマは、
「使用料を払わないと使えない」し、
出版社の許可を「なかなかもらえない」ものだったのである。


噂ではあるが、
かつての、30年近く前の「ぱふ」では
(いまの「ぱふ」とは厳密に言うと違う)、
集英社から圧力があり、
集英社のマンガ作品のコマを一切使えなくなったと聞いていた。


ここに風穴を開けてくれたのは、夏目房之介氏だった。
ご自分の著書(評論)にマンガのコマの引用をしていたのを知っていて、
その引用について出版社を向こうに回して戦い、
堂々と勝利をおさめていた。


だが、『このマンガを読め!』は、
言ってみれば評論ではない。ガイドブックだ。
この場合でも大丈夫なのかを、夏目氏に聞いてみた。
引用とはなにかについての書類を夏目氏はファクスしてくれ、
「なんの問題もない」と言ってくれた。


こうして『このマンガを読め!』にマンガのコマが入ることになったわけである。
そうは言っても、クレームがあるかな、くらいの覚悟はしていたが、
結局、どこからもそんなものはなかった。
(翌年、宝島社が「このマンガがすごい!」を出そうと思ったひとつの理由に、
“コマが引用できる”ということがあったのではと思うのだが、
真偽については不明)


2006年版は、
スキャニング作業は大変だったが、調子に乗って、
マンガのコマをほとんど全ページにわたって使用した。


2007年版は、もっと読みものを増やそうと思い、
萩尾望都氏とよしながふみ氏の対談、楳図かずお
古泉智宏、山松ゆうきち各氏のインタビューを載せた。

2007年版は面白いものが出来たと思ったので、
かなり売る自信があったのだけど、
結果は例年通りの売れ行きだった。
読者が望んでいることは違うのかなと思い、
2008年版で、
BEST作品の「試し読み」(巻頭8ページ)というのを試みる。

各出版社が、自社のものではない雑誌に、
巻頭8ページとはいえ、再録することは、まずない。
自分で言うのもなんだけど、これは前代未聞の試みだった。


いろんな出版社がウェブで、
いわゆる「試し読み」できるようにしているんだから、
大丈夫だろうと思っていたが、実際は、難航を極めた。
実際に収録できた作品も7作品だった。
読者の反応も芳しくなかった。


今回、2009年版では、一話丸々の再録を試みたわけであるが、
8ページで難航したのに、
一話丸々の再録しようと考えるのも無茶な話であるが、
読者にとってなにが一番かを考えた場合、
こういう結論になったのだ。


評判はいまのところなかなかよく、
「年間のマンガのベストアンソロジー」として定着するといい、
という意見もあった。


年間のマンガのベストアンソロジー、って、
野球で言えば、オールスターとか、
ワールドベースボールクラシックみたいなもので、
大げさだけど、「夢のような話」だ、
と自分がやっておいて思います。


少し前なら、しようと思っても絶対にできなかったことなんですよ。
ここは強調しておきたい。
マンガ業界を知っている人ほど、そう考えるはずだと思う。


時代が変わった、
マンガをとりまく情況が変わったとは思いますが、
思えば遠くへ…と、この5年間だけを振り返ってみても思っています。

このマンガを読め!〈2009〉

このマンガを読め!〈2009〉